【知能指数検査とギフテッド判定④メンサのドクター】ギフテッドのプロにたどり着く
悩みに悩んで決めた、息子の知能指数検査のためのシンガポール行き。
価格重視で航空券を選んだので、シンガポールに到着したのは夜中でした。
診察の日を絶不調で迎える
無理な旅程に疲れが出たのか、翌朝、息子は熱を出して朝食時に吐いてしまうまでの絶不調に。
ドクターとの予約はその日の午後。
診断結果が出るまでに数日かかるので、到着翌日に診察を受けて、帰国する前日に結果をもらってカウンセリングを受けるというギリギリの日程を組んでいました。そのため、診察日を後ろにずらすことはできません。キャンセルすれば多額のキャンセル料を取られます。
午後には何とか熱は下がって元気にはなったものの、この上なく機嫌の悪い息子を連れてクリニックに向かうことになりました。
雨まで降ってきて不吉な予感が。
視覚過敏が発動したらすべてがおじゃんに
息子は感覚過敏なところがあります。
特に視覚から入ってくる情報には必要以上に敏感で、何の変哲もない店舗や建物でも息子独自のセンサーが反応してしまうことがあり、絶対入らない、近づかないと言って私たちを困らせることが頻繁にありました。
よくありがちな歯医者が怖いとか注射が痛いとか、習い事が嫌だとか幼稚園がしんどいとかならば、まだ何とか子供の心情を理解することもできたでしょう。
息子の場合不思議と、医療関連にはそれほど抵抗感がなく、習い事や幼稚園も、気が乗らない時やそんなに好きではない習い事でも、「行かない」と言って駄々をこねることは一度もありませんでした。
息子が入れなくなるのは私たちにとっては極めて平凡な場所。
おしゃれなカフェやレストラン、ありきたりな銀行や商業施設、果ては子供向けの楽しいイベントまで、痛くもかゆくもない日常的空間で、突然異常な拒絶反応を示して動かなくなってしまうのです。
人が多いところが怖いのかと思いきや必ずしもそうではなく、人気のないビルでもダメな時はダメ。
気に入らないことがあってへそを曲げたり不貞腐れたりするのとも違う。
本能的に何かに過剰に反応しているというか、私たちには見えない何かが息子には見えていて恐怖におののいている、という表現が一番合っているかもしれません。
論理的に説得してみても、口車に乗せてノリで行かせようとしても、一度固まってしまったら梃子でも動きません。
レストランやお店なら他を当たれば済みますが、避けられない用事でどうしてもその場所に入らないといけない時は本当に困ります。
はるばるシンガポールまで来て、思わぬところで拒絶反応が出てしまったら全てがおじゃんです。
実力行使で抱きかかえて無理やり受診させたとしても、一度心を閉ざしてしまったらまともに受け答えできるとは思えません。
今ならこのやっかいな性分は極端な視覚優位型学習者(ビジュアルラーナー)故の反応だとわかるのですが、当時はひたすらやっかいなだけで謎で、その度に頭を抱えていました。
ご夫婦でメンサ!ドクターご自身がギフテッド!
予約したクリニックが入っている商業ビルは、シンガポールの中心にある華やかな通りではなく、電車を乗り継いでたどり着くマイナーな地域にあり、建物も派手な印象はなくどちらかというと寂れていました。
クリニックそのものはシンプルというか殺風景というか、子供がワクワクするような要素は微塵もありません。
知らない土地ですし雨は降ってるし、息子の地雷に引っ掛かりそうな要素が満載で道中は不安でいっぱいでした。
ところが、予想に反してスムーズに到着し、クリニックに吸い込まれていく息子。
待合室の隅に置いてある知育玩具で遊び始めたのを見て、私たちも一安心。
受付では奥様が出迎えてくださり、待っている間の暇つぶしにと、クリニックについてまとめてあるファイルを見せてくださいました。
ギフテッド教育についての記事やクリニックの診療メニューが載っている分厚い資料です。
目を通していくうちに、ドクターと奥様の経歴が載っているページで手が止まりました。
なんとドクターのプロフィールに、IQ上位2パーセントのみが入会資格をもつシンガポールメンサの会員の肩書が。
さらに、奥様のプロフィールにも同様にシンガポールメンサ会員と書いてあります。
ご夫婦そろって知能指数上位2パーセントに入る、正真正銘のギフテッドだったのです。
ギフテッドご用達クリニックのドクターご自身がギフテッド。
なんか物凄い説得力。
あの息子を秒速で手名付けた
息子の順番が回ってきました。親子で診察室へ入ると、ドクターが大きなデスクの向こう側で笑顔で待っていました。
息子はデスクを挟んでドクターと向かい合った位置に座るように促され、私たち親は外で待っているようにとのこと。
いや無理。
親がそばにいてリラックスした状態でも、他人には挨拶しない反応しない目を合わせない息子です。
よく知っている相手でさえ無視して拒否する彼が、異国の地で初対面の人といきなり二人きりで部屋に残されるのは絶対無理。
おまけに体調悪くて不機嫌ときた。
状況を把握していない面持ちの息子が指定された椅子に座りました。
すかさずドクターが息子に話しかけ、注意を引いている隙に、ギャン泣きするのを覚悟で私たちは診察室を出ました。
知らない人と二人きりにされてしまった状況に気づいて今にも泣きだすだろう、ドアを突き破って出てくるかもしれない、と耳をすませていると、なんと息子がケタケタ笑う声が聞こえてくるではありませんか。
すごい。あの息子を秒速で手名付けた。
楽し気な会話まで聞こえてきます。
ドアの小窓からこっそり覗いてみると、ドクターと意気投合して嬉しそうな息子の様子が見て取れます。
おお、まさにプロ。
長い時間がかかりましたが、受付カウンターから出てきてくださった奥様とよもやま話に花を咲かせているうちに無事に診察も終わり、なにやら小さなご褒美をいただいた息子が嬉しそうに診察室から出てきました。
診察前にはなかった大きな目ヤニも出ていて体調不良なはずですが、「楽しかった」とご満悦。
あとは結果を待つだけです。
確かな手ごたえを感じながらクリニックを後にしました。